脂質異常症
どんな病気ですか?
血液の中に含まれる脂肪分には、代表的なものとして、コレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)があります。コレステロールはさらに、HDLコレステロール(血管が細くなるのを予防する良いコレステロール)、LDLコレステロール(血管を詰まらせる悪いコレステロール)などに分かれます。これらをまとめて総コレステロールとよびますが、その大部分を占めているのがLDLコレステロールです。
血液中の脂肪分のバランスが悪い状態を、脂質異常症とよびます。これは、中性脂肪、LDLコレステロールが多く、HDLコレステロールが少ない状態です。総コレステロールが多い状態も危険です。脂質異常症を長年放置しておくと、血管内に脂肪がたまって血液がうまく流れなくなると、やがて血管が詰まり、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞など、重篤な病気の原因となります。
どんな症状ですか?
脂質異常症は、これだけでは自覚症状がまったくないことが多く、健康診断などでたまたまみつかる人がほとんどです。しかし、脂質異常症により血管が細くなってくると、それに応じた症状が出てきます。例えば心臓の血管の場合は、運動時に胸の圧迫感を認める事があります。脳の血管の場合、一時的な手足のしびれや、言葉が上手く発せられない、といった症状がみられることがあります。
しかし、この頃には血管はかなり細くなっており、治療が困難となるケースが多いため、自覚症状がないうちから検査や治療を行なうことが重要です。
どんな検査を受けると分かりますか?
●血液検査 |
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脂質異常症は、血液検査(朝食前の空腹時が最適)で簡単に診断できます。一般的には、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)を調べます。
これらの正常値が当てはまるのは、心臓病・高血圧・糖尿病などの病気がない、非喫煙者です。他に病気がある場合、その程度に応じて、総コレステロールを200mg/dl未満(場合によっては180mg/dl未満)まで改善することが必要です。 |
どんな治療法があるの?
脂質異常症の治療は、正常値(目標値)になることを目標とします。治療法には、生活習慣の改善と薬物療法があります(生活習慣の改善は、次の予防法の項を参照)。
●脂質異常症治療薬 |
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お薬の進歩により総コレステロールとLDLコレステロールは1日1~2回の服薬でほとんどの人が正常値まで改善できますが、中性脂肪は薬物療法のみでは正常値にまで改善しない場合があり、食事療法の方が重要です。 |
予防法はあるのですか?
生活習慣を改善することは、脂質異常症の予防にとても有効であるだけではなく、他の生活習慣病の予防にも効果があります。既に脂質異常症を認めている人や肥満傾向の人は、まずカロリー制限を行うことが重要です。
●食生活の改善 |
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・カロリー制限 標準体重(kg)=身長(メートル)×身長(メートル)×22 もし現在、標準体重を超えているようであれば、標準体重を目指して減量しましょう。日常生活程度の運動量の人は、1日の摂取カロリー(kcal)を標準体重(㎏)×25ぐらいに制限します。肉体労働などかなりの運動をする人の1日の摂取カロリーは、標準体重(㎏)×30くらいを目安にしましょう。
・コレステロールを多く含む食品の制限
・魚を大目に摂る
・アルコール、ジュース類などの制限 |
●運動習慣 |
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運動することでコレステロールや中性脂肪は低下し、HDLコレステロールは増加します。有酸素運動(全身を動かして大量の酸素を取り込む)を無理なく続けることが効果的です。具体的には、ウォーキング(早足での散歩)、サイクリング、水泳などです。ただし、心臓などに病気がある人は、必ず医師と相談ましょう。 |
●禁煙 |
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喫煙は、HDLコレステロールを低下させ、血管も細くします。狭心症や心筋梗塞などのリスクが高くなるため、今からでも禁煙しましょう。命を守るために必要です。 |
ただし、生活習慣の改善だけでは十分に脂質異常症が改善しない場合もあります。同じ脂質異常症でも、状態や性質は個人差が大きく、人によっては薬物療法が必要になることもあります。主治医とよく相談して、適切な検査や治療を受けましょう。